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自己破産した後に過払金返還請求はできますか

現在,請求できる事案はほぼない

個人破産で同時廃止事件で終了した場合

個人の方が破産を申し立てて,破産管財人が選任されずに終了した場合(同時廃止事件),申立を依頼した弁護士等により回収されていなければ請求は可能です。 ただし,過払状態であることを知りながら敢えて債務があるものとして申し立てた等の場合には,破産後の請求が権利濫用・信義則違反として否定される場合があります(否定する裁判例があります)。

平成15年,16年前後までに自己破産を申し立てた事案で,過払い金の調査回収をしていない例が多く見られます。

しかし,過払金の消滅時効は取引終了から10年ですので,支払いを停止したときから10年経っている場合は,消滅時効が成立して回収はできません。破産申立時には支払いを停止しているので,平成15年,16年前後に申し立てた方を含む今から10年以上前に破産した方は,過払金が発生していたとしても,消滅時効が成立していることが明らかです

破産申立時からまだ10年経っていなくとも,破産申立ての準備に入った時点までには支払いを止めているはず。準備着手から申立まで数ヶ月かかるのが通常であることからすると,破産申立の数ヶ月前には支払いを停止しているはずです。そのため,破産申立準備に着手した時点から10年経っている場合,過払金には消滅時効が成立していると考えられます。

以上から,現在,破産後の過払金返還請求をしうる方は,過払金の調査をしないで申し立てて同時廃止で終了した方のうち,支払いを停止したときから10年経っていない方になります。

    (すべてを満たすことが大前提)
  • 過払金の調査をしないで申し立てた
  • 同時廃止で終了した
  • 支払停止から10年経っていない

なお,上記の条件を満たせば,過払金返還請求ができる可能性がある,調べてみる価値はあるというに止まり,上記の条件を満たせば必ず過払金返還請求ができるわけではありません。

また,平成18年1月13日の最高裁判決で過払金返還請求が容易になった以降は,代理人が過払金の有無を確認しない例は少なく,さらに,平成20年前後から,裁判所も過払金の事前調査を促し,調査未了の場合は破産管財人を選任して調査する運用になったため,平成18年以降から平成20年代に申し立てた事案では,多くは申立て前に代理人が過払金調査・回収をしているか,破産管財人により処理されていると考えられます。そのため,過払金を調査しないまま申し立てた方は,年々少なくなっています。

もっとも,破産申立時点ですでに完済していたため,代理人に申告すらしていなかった貸金業者があるのであれば,その貸金業者の過払金は調査未了になっている可能性はあります。

個人破産で破産管財事件になった場合

1.破産管財人により換価(回収)された場合

個人の方が破産を申し立てて,破産管財人が選任され,破産管財人により回収がされていれば,当然,免責後に破産者自身が請求することはできません。

2.財団放棄・自由財産の拡張がされた場合

個人の方が破産を申し立てて,破産管財人が選任されて債権債務調査が行われ,過払金返還請求権が破産財団から放棄されている場合や自由財産の拡張がされている場合は,問題なく過払金返還請求できます。ここで破産財団から放棄するとは,破産手続内では換価せず管理処分権を破産者に戻すことを言います。自由財産の拡張とは,破産者の生活費等に用いる必要性等から換価対象からはずすことを言います。

少額の過払金,回収見込みが立たない過払金等については,破産財団から放棄や自由財産の拡張がされている例があります。ただ,金額が少額であれば破産者にとっても回収実益は少なく,回収見込みが立たない過払金は回収が期待できないので,事実上断念せざるを得ない場合が多いと思われます。

3.破産管財人による回収・財団放棄・自由財産の拡張のいずれもされていない場合

破産管財人が選任されれば,上記1,2のいずれかで処理されますが,①破産前に完済した取引について過払金債権の存在を申告せずに申し立てた場合や,②約定債務が存在するものとして扱われた場合,上記1,2のいずれの処理もされずに破産手続が終了している場合があります。

①破産前に完済した業者について過払金債権の存在を申告せずに申し立てた場合は,「個人破産で同時廃止事件で終了した場合」と同様に信義則違反・権利乱用が問題になります。ただし,破産前に完済した業者の場合,その貸金業者は破産者が破産した事実を知らないことが多く,そもそも貸金業者側から信義則違反・権利乱用の主張がされない場合があります。

②の約定債務が存在するものとして扱われた場合としては,まず,申立人側も破産管財人も法定利息計算をしていなかった場合やそもそも取引履歴の開示を受けていなかった場合が挙げられます。しかし,これらが発生する可能性があるのは,みなし弁済の適用の可能性が残っていた最高裁判決平成18年1月13日が言い渡される前,裁判所が過払金の有無の調査を促していなかった時期であり,この10年以内では,このような場合が発生する可能性は極めて少ないと考えられます。そうすると,10年以上前の破産事案は対象となり得ますが,過払金には消滅時効が成立し,信義則違反・権利乱用の問題以前に請求はできなくなります。

②の約定債務が存在するものとして扱われた場合として,他に挙げられるのは,計算方法を巡る争点について,破産管財人が消極的な計算方法をして,債務が残ると判断した場合があります。当事務所が扱った事案では,破産手続では,破産管財人が一旦完済する毎に取引を別にして計算したため債務が残ると判断されたが,契約は1個で中断期間が短期であるため一連取引と認められる取引であった事案,クオークローン・プロミス切替事案ついて,申立代理人も破産管財人もプロミス部分のみを計算したため債務が残ると判断されたが,破産手続終了後に最高裁判決例で一連性が認められ,一連計算で計算した過払金の請求が可能になった事案があります。破産者は,破産管財人の計算方法に拘束はされませんが,「個人破産で同時廃止事件で終了した場合」と同様に信義則違反・権利乱用が問題になります。

なお,①・②のいずれについても,破産管財人が債務の存在を認めて配当が実施されている場合,破産管財人が認めた債務の存在を後に争うことはできなくなるので,この場合は,破産手続終了後に破産管財人の計算方法を否定して過払金返還請求することはできなくなると考えられます。

破産債権との相殺の可否

過払金返還請求ができる場合でも,自己破産時に同じ貸金業者に過払状態の取引と債務が残る取引があった場合,自己破産後に過払い金返還請求をすると免責を受けた他の債務との相殺を主張されることがあります。免責された債権での相殺の可否という論点ですが,この点は相殺を肯定した判例が確認されています。しかし,当事務所では,オリエントコーポレーション,クレディセゾンについて免責を受けた債権との相殺を否定し当方の請求を認容した判決を得ています(東京地裁判決H23.5.24/同H23.8.23)。

また,破産当時存在した過払い金は本来であれば管財人が回収して他の債権者の配当に回すべき財産であり,破産者が受領できる金額ではなかったなどとして権利の濫用の主張がされることがあります。これは個々の事案の個別具体的な事情に応じた判断がされます。多くは,取引履歴の開示をされず過払状態であることを知らずに申し立てているので権利濫用・信義則違反に該当するれいは特殊な事案であると思われます。当事務所では,信義則違反・権利濫用に当たらないとして請求を認容した判決を得ています(東京地裁判決H24.12.20(CFJ),同H25.6.12(アコム))