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免責とは

免責の意味

一般的には「債務がなくなる」と捉えておいて良いと思います。ただし,債権者は破産手続で配当を受けることができ,また,抵当権等の別除権を持っている債権者は破産手続によらないで権利行使できるので,「債務がなくなる」のは配当や抵当権等の別除権の行使で返済しきれなかった部分になります。学説上は,債務自体がなくなるのではなく強制的に回収できなくなるというのが通説ですが,債権者は破産者に請求できなくなりますし,免責後に破産者を訴えても免責を主張すれば棄却されますから,事実上「債務がなくなる」のと同じことになります。

なお,免責は個人(自然人)である債務者のみに認められる制度のため,会社には免責制度はありません。ただし,会社は破産により解散となって法人格を失う(消滅する)ため事実上債務を免れることになります。

保証人等への影響

免責の効力は保証人には及びません。破産者が免責されても保証人は債権者に全額を返済しなければなりません。また,ご親族など他人の所有財産に抵当権等の担保権を付けている場合,その担保権も免責の影響を受けないので,債権者は抵当権を実行することができます。

保証人等が債権者に返済すると破産者に求償権を取得しますが,この求償権には破産の効果が及ぶので保証人は肩代わりした分の支払を破産者に求めることができません。

自己破産すると保証人等に負担をかけることになるので,自己破産するときはあらかじめ保証人に話を通しておく必要があります。債権が多額の場合,保証人も一緒に自己破産となるケースもあります(例えば,住宅ローンで破産者の配偶者が連帯保証人になっている場合など)。

免責されない債権(債務)

免責許可決定が確定しても,以下の債権(債務)は免責されません。

  1. 租税債権(税金)
  2. 破産者が悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権
  3. 破産者が故意・重過失によって人の生命・身体を侵害した場合の不法行為に基づく損害賠償請求権
  4. 婚姻費用の分担・養育費等の家族法上の義務にかかる請求権
  5. 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預金返還請求権
  6. 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
  7. 罰金等の請求権

以上のうち,2と3が問題となる方はほとんどいません(単なる契約違反は2には該当しません)。仮にそのような債権があったとしても,「悪意」「故意・重過失」に当たるか必ずしも明らかではないので債権者名簿に記載して申し立てるのが通常でしょう(免責されないとして請求するかどうかは債権者の判断に任せられます)。

注意が必要なのは,6の「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権」です。申立代理人は漏れがないように調査して申し立てますが,銀行引落になっている債権以外の債権は,依頼者が代理人に申告しないと分からない場合があります。借金については全てを申告することが必要です。事実上請求がされていない債権についても申告して下さい。破産決定後に漏れに気がついた場合でも,免責を受ける前に,債権者に破産決定がされたことを知らせれば免責の効果は及ぶので,破産申立後でもまだ間に合う場合もあります。ただし,この場合でも,内容証明郵便で知らせておかないと後に請求されたときに「知っていた」ことの立証が困難になります。

また,破産決定後に負担した債務は免責されません。

免責不許可事由

破産法では,裁判所は破産者について以下の事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をすると定めています。実際に問題となることが多きのは1~5です。

  1. 【詐害行為目的での財産の不利益処分】
    債権者を害する目的で、破産財団に属し、または属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
  2. 【不当な債務負担行為】
    破産手続きの開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
  3. 【不当な偏波行為】
    特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又は層の方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
  4. 【浪費又は射幸行為】
    浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
  5. 【詐術による信用取引】
    財産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
  6. 【帳簿隠滅等の行為】
    業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
  7. 【虚偽の債権者名簿の提出】
    虚偽の債権者名簿(第248条第5項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第1項第6号において同じ。)を提出したこと。
  8. 【調査協力義務違反】
    破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
  9. 【管財業務妨害行為】
    不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
  10. 【免責の期間制限】
    次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと。
    イ【免責後7年以内の免責申し立て等】
     免責許可の決定が確定したこと。当該免責許可の決定の確定の日
    ロ【給与所得者等再生からの免責の期間制限】
     民事再生法(平成11年法律第225号)第239条第1項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
    ハ【ハードシップ免責からの期間制限】
     民事再生法第235条第1項(同法第244条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
  11. 【破産手続・免責手続上の義務違反行為】第40条第1項第1号(※破産者等の説明義務)、第41(※破産者の重要財産開示義務)条又は第250条第2項(※免責についての調査協力義務)に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。 

裁量による免責許可

上記の免責不許可事由のいずれかに該当する場合でも,裁判所は,破産至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは,免責許可することができます。

免責不許可事由に該当する場合には,資産の有無にかかわらず,少額管財事件として申立て,裁量免責を得ることを目指すことになります。免責不許可事由に該当する多くの事案で裁量免責が認められています。経済的更正に真摯に取り組む姿勢と裁判所・破産管財人の調査に十分に協力することが必要です。自己破産せざるを得ない状況にある方は,免責不許可事由に該当する場合でも,無理に任意整理・民事再生を選択せず,まずは弁護士に相談することが大切です。