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任意整理

任意整理とは

任意整理とは,債権者と交渉して,債務残高の減額,利息,損害金の免除,分割払いの和解をし,過払い金がある場合には交渉又は訴訟で過払い金の回収をすることで債務整理する手続です。利息制限法所定の利率に従って再計算して残った債務については分割で支払う和解を成立させます。過払い金を回収し残債務に充てることができる場合もあります。自己破産や個人民事再生と異なり,裁判所の決定で強制的に債務を圧縮又は免責するものではないので任意整理と呼ばれています。自己破産や個人民事再生は法律の定めや裁判所の運用に規制されるため,どの事務所が行うかで最終的な結果が変わる幅は少ないといえますが,任意整理は,弁護士又は司法書士が各債権者と交渉・訴訟により債務を整理するので,どの事務所に依頼するかで結果が大きく変わる手続ということができます。

適する方

任意整理は次の条件を満たす方に適しています。

  1. 分割支払期間中に継続的な収入が見込めること
  2. 月の返済可能額に分割予定回数(~60回)を乗じた額まで債務が減る見込みがあること

返済可能額は収入から生活費や居住費などを引いた余剰額の半分程度以下を目安にします。余剰の額全額を返済に充てる計画をしても,3ないし5年の間に不測の支出は必ず生じるので,途中で頓挫する可能性が高くなります。

メリット・デメリット

メリット

  1. 取立を停止できる。
  2. 破産のデメリット(不動産などの財産の処分)を回避できる。
  3. 事故情報の登録期間が破産・民事再生より短い。

デメリット

  1. 法定利率で計算し直した額までしか債務の減縮が見込めない。
  2. 債権者の個別の同意(債権者との個別合意)が必要(債権者が拒否すれば解決しない)
  3. 事故情報が登録され,今後の借入が一定できなくなる。

注意点

任意整理は,あくまで各債権者との個別合意により解決するものです。そのため,債権者が合意を拒否すれば任意整理はその時点で解決不能となり,強制整理(破産・民事再生)を検討しなければならなくなります。ほとんどの会社は和解に応じますが,一部,任意整理に非協力的な会社があります。非協力的な会社が含まれる場合には勧め方を工夫する必要があります。

任意整理で,解決できない場合には強制整理(破産・民事再生)をせざるを得なくなるため,楽観的な見込みで着手するのは控えるべきです。最悪,返済可能額まで減額できない場合(超過利率取引部分が少ない場合など)や一部債権者が分割払和解を拒否した場合にどうするかを考えておく必要があります。

破産・民事再生を回避するために無理な返済計画で任意整理で解決すると,途中で頓挫し,その時点で強制整理をせざるをえなくなる可能性が高くなります(支払った金額が全て無駄になる)。無理な返済計画遂行中の家族の負担も大きくなります。経済的再生を重視した手続選択をする必要がます。

減額できる債務

利息制限方所定の利率(法定利率)を超える利率(超過利率)で返済していた債務については,法定利率で計算し直した額まで債務穂減らすことができます。負債の全部または多くが超過利率の取引の場合には,減額できる幅が大きくなるので,自己破産をせざるを得ないと考えていた方でも,任意整理で解決できることも少なくありません。法定利率による計算方法は1つではなく,最も有利な計算方法による解決を目指す必要があります。

減額できない債務

法定利率による取引の債務は減らすことができません。滞納している利息・損害金と将来発生する利息の免除に止まります(元本額のみの単純な分割払い)。銀行系カードローン,ショッピング利用分は法定利率内であり,信販系のカードローンには法定利率のものが多く見られます。また,最近始めた取引は当初から法定利率であることが多くなります。負債の全部または多くが法定利率内の取引の場合は,減額できる幅が少なくなります。

分割回数

通常は36回から60回の範囲で和解が成立します。60回を超える分割に応じる会社ありますが多くはありません。また,分割回数は取引毎の債務額に応じて変わります。多くの会社は月4000~5,000円以上の支払いになることを求めてきますので,あまり少額の債務を長期間の分割にすることは難しくなります。また,負債総額と収入とのバランスで月の支払可能額が変わり,これに応じて適切な分割回数も変わります。

手続の流れ

任意整理の受任後ただちに各債権者に受任通知を発送し取立を止めます(支払も停止します)。当事務所では弁護士費用を分割で支払う場合でも,1回目の分割金の支払を待たず受任後直ちに受任通知を発します。

受任通知からおおむね1 ヶ月ないし2 ヶ月ほどで取引履歴が開示されます。開示された取引履歴を基に利息制限法に従って再計算し,正確な債務残高,過払い金の額を確認します。債務残高については通常36 分割(最大60 分割)で返済する和解交渉をします。状況に応じて60回を超える分割払いに応じる会社もありますが多くはありません。

過払い金については交渉又は訴訟で回収します。過払い金を他の債務の弁済資金にできる見込みがある場合には回収を待ってから債務について和解交渉をするなど場合により整理方法は変わります。弁護士なら本人が出頭しなくても訴訟ができます。分割払いの和解,過払い金の回収のいずれについても債権者と和解書を作成して後に争いが生じないようにします(訴訟の場合には,和解調書や判決書の場合もあります)。すべての和解,回収が終了すると任意整理は完了となり,回収過払い金があるときはそこから報酬を精算してご指定の口座へ振り込んでお返しします(任意整理の処理結果・報酬を記載した明細書とともに和解書や債権者から返還された貸付契約書等をお渡しします。)。当事務所では,過払い金で報酬を精算できない場合には任意整理完了時の経済状況に応じて分割払いができます。

任意整理開始から完了までの期間は場合により異なります。債権者への支払いが始まるのは任意整理に着手してから数ヶ月後になるのが通常です。過払い金を十分に回収し他の債務の弁済に充てることで債務がなくなる場合もあります。任意整理は自己破産・個人民事再生と異なり,進行が決まっていない分,ご事情により柔軟な対応ができます。支払を止めた後は支払開始を急ぐ必要はないので,早い解決を強調した安易な和解・回収は依頼者の利益にはなりません。依頼者に有利な法定利息計算方法で減額も回収額も最大にすることが重要です。