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ノーローン(シンキ)「無利息特約」なのに利息を主張!

・契約上,利息が免除されている以上,利息支払義務がないことに変わりはない

・どの期間に利息を払うかは,契約の問題であり,利息制限法の問題ではない

利息制限法は「無利息・利息免除特約」を無効にしない

~「無利息特約」でも「免除特約」でも,利息を支払う契約上の根拠はない ~

シンキは,「無利息特約は利息免除特約であり,無利息期間中にも利息は発生しているから,無利息期間についても利息制限法所定の利率による利息(制限利息)を計上すべき」と主張してきます。シンキの論理は,無利息特約なら利息が発生しないので制限利息を徴収する根拠はないが,免除特約なら対象期間中に利息は発生するので,無利息期間も制限利息を徴収できるというものです。

しかし,免除特約であっても,契約上,当事者間の合意(特約)により既に対象期間中の利息支払義務を免除する効果が生じている以上,対象期間中の利息支払義務がないことに変わりはありません。借り主に,その期間について,利息支払義務があるかは,契約の問題であって,利息制限法の問題ではありません。利息制限法は,契約上,借り主に利息を支払う義務がある期間について,その義務を制限する法律であり,契約上,無利息の期間や利息が免除された期間について,利息を発生させる利息根拠法ではないのです。

そのため,無利息でお金を貸したら利息制限法に基づいて制限利息を請求しても,利息を払う合意がないので認められませんし,年10%で貸したのに同法に基づいて年18%を請求しても,年10%を支払う合意しかないので認められません。また,利息を免除した後に同法に基づいて制限利息を請求しても,免除している以上,認められません。

契約上,借り主が利息支払義務を負わない期間や免除された期間は,利息制限法の関知するところではないのです。

そして,利息制限法は,借り主保護のため借り主の利息支払義務を制限する法律なので,利息制限法が適用されると,契約に基づく場合より,かえって借り主の義務が重くなる解釈は成り立ちません。

例えば,シンキが50万円を年28%,初回から7日間の利息免除する特約付きで貸し,借り主が8日後に年28%で1日分の利息383円を付した50万383円を払って完済したとします。ここで,免除特約だから利息制限法に基づいて制限利息を徴収できるとすると,シンキは制限利率18%で8日分の3068円請求できることになり,2685円足りないから払ってくれと言うことができることになります。借り主保護ための利息制限法を適用することで,契約した内容以上の支払を請求できることになります。しかし,これは利息制限法の目的・趣旨に照らし,解釈としてありえません。

しかも,弁済金は利息・元金の順に充当されるので,支払った50万383円は利息3068円から先に充当される結果,元金が2685円残ることになり,この元金に更に年18%の利息が日々発生することになります。

しかし,利息制限法が適用されると,契約上残高がなかった期間について利息が発生したり,契約上完済している取引に債務が残るなどというおかしな解釈はあり得ません。契約上残高がなかった以上,その期間は借り主が返済できる余地はなく,仮に入金してもシンキから過剰入金ですと言われて返されはずです。契約上残高がない期間は利息支払義務どころか金銭消費貸借関係すらないのです。

これでは,利息制限法は,貸し主が,無利息や利息免除の合意を反故にして,契約上予定されていた以上の利息を請求できるようにする法律となり,貸し主保護の法律になってしまいます。利息制限法の目的・趣旨から,契約上,無利息とされ,または免除するとされ,現に無利息にされ,免除された期間について,利息制限法が契約の効果を無効にして利息を発生させるという解釈は,利息制限法を,利息制限法ではなく,利息根拠法・利息強制法と捉えない限り,成り立たない解釈です。しかし,そのような法律ではないことは説明するまでもありません。

シンキが積極的にこの主張をする取引は無利息期間の利用が多かった取引ですが,シンキが無利息期間中の制限利息を主張しながら,その主張に沿った計算書を提出してこない場合は,完済したはずの取引に債務が残ることになるなど,計算書を提出するとその主張の不合理さが露呈する事案です。

また,シンキの主張は,貸金業法との関係でも問題があります。

先の例で,初回7日間の利息を免除し,年28%で1日分の利息383円を徴収するというシンキが意図した契約通りの結果を保持するためには,シンキは,厳格な要件を充足して,みなし弁済の適用を受けなければなりません。すなわち,旧貸金業法に従い,法定記載事項が記載された不備のない法定書面を入出金毎に定められた時期に交付し,借り主から任意に超過利息の弁済をうけ,その事実を立証する必要があります。

ところが,シンキが法定書面を交付せず,また,借り主から強制的に超過利息を徴収したため,みなし弁済が適用されない場合には,利息制限法に基づいて,みなし弁済の適用がある場合よりも多い3067円の利息を徴収できることになります。

すると,シンキは,貸金業法上の義務など守る必要はありません。むしろ,守らない方が得することになります。かくして,貸金業法上の書面交付義務を遵守し,任意に支払を得た貸金業者のみに超過利息の保持を認めて,貸金業法上の義務の遵守を促し,強制的な取立を抑制し,ひいては借り主を保護しようした貸金業法の趣旨は完全に失われます。

貸し主・借り主の契約(合意)により,無利息期間・免除期間とされた期間や利息が免除された期間について,利息制限法に基づいて制限利息を徴収できるという解釈は,利息制限法・貸金業法の解釈として成り立たないのです。

利息制限法・貸金業法は強制法規なので,借り主が主張て初めて適用されるのではありません。当事者の認識にかかわらず,実体的には両法に基づいた権利関係が当事者間に存在することになります。「この事案については,無利息期間に制限利息を計上しても過払い金が減るだけだから,制限利息は徴収できるとしよう,でも,この事案については制限利息を計上すると契約よりも利息が多くなっておかしいから,制限利息は徴収できないことにしよう」などと事案毎に利息の有無を変えることはできません。すべての事案について,合理的な結論が導かれる解釈でなければなりません。

「対象期間について利息制限法を適用するときには免除特約は適用されない」という理由で,シンキの主張を認める判決が証拠提出されますが,借り主保護の利息制限法に基づいて,利息を免除する合意の効力を否定し,契約上,利息支払義務がなかった部分に利息を認めたものであり,いわゆるトンデモ判決というべきものです。この判決によれば,特別に1週間年利10%の特約があっても,その部分に利息制限法に基づいて年18%などの制限利息が発生することになりますが,利息支払義務は当事者間の合意に基づくものであり,利息制限法に基づくものではないという基本が理解されていません。これでは,「利息は全額免除!」と広告して借り入れさせた場合,貸金業者は,利息制限法に基づいて利息を徴収できることになり,利息制限法は借り主保護の法律でも何でもなくなります。

そして,特約が,初回7日間利息が発生しない無利息特約でも,初回7日間の利息を免除する利息免除特約でも結論は同じです。

当事務所が代理した東京地方裁判所判決平成26年8月7日は「本件特約の対象期間中の利息は本件特約によって免除されており,結果として発止しなかったと見るより他ない(そもそも発生しないのか,発生した上で免除されるのかについては,結論は左右するものではないと思料する)」としてシンキの主張を排斥しています。シンキは控訴しましたが,東京高裁(平成26年(ネ)第4747号)も原審と同じ心証を開示し,結局,シンキは,当事務所の計算による元利金合計額を返還する和解に応じています(他に,東京簡裁判決平成26年7月16日,東京簡裁判決平成25年11月19日もシンキの主張を排斥している)。

無効になるのは利息額ではなく利息の約定である

シンキは,利息制限法1条は「利息額」の上限を定める規定であるから,実際に徴収した利息額が無利息期間を通じて制限利率で計算した額を超えなければ,その利息額は有効であると主張することがあります。

しかし,同条項は,「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は,」「無効とする。」と定めており,利息の約定のうち,制限利率を超える部分を無効とする規定です。徴収した約定利息額と無利息期間をも含めて全期間を所定の制限利率で計算した合計利息額との比較で利息額の効力を決めるものではありません。

仮に,シンキが主張するように,同条が,合計利息額の比較で利息額を無効にする規定であるとすると,いくらが無効になるかは取引が行われた後の事後的な判断となり,取引が終わり,貸金業者が実際に徴収した利息額が確定しないと無効となる利息額が確定しないことになります。

例えば,貸金50万円,年29.2%で,無利息期間7日間とした場合,合計約定利息額が全期間を通じた年18%の合計法定利息額を超えるのは,借入日から19日目です。それまでは,年29.2%で計算した約定利息額は適法になるか無効になるか分からないことになります。

     合計法定利息額:4,684円=50万円×18%÷365日×19日

     合計約定利息額:4,800円=50万円×29.2%÷365日×(19日-7日)

では,19日目になれば,上記の差額116円の利息額は無効で確定するかというとそうはなりません。なぜなら,19日目に約定通り50万4800円を支払って完済し,翌日50万円を再度借り入れたらそこからまた無利息期間7日が始まるので,差額116円は適法に復活し,最初の借入れから40日目まで,合計約定利息額は,全期間を通じた合計法定利息額を超えなくなるからでです。

結局,契約が終了し,貸金業者が実際に徴収した合計約定利息額が確定するまで,利息額のうちいくらが無効になるか判断できないということになります。

極端に言えば,100万円を,年30%,2年間,毎年末日に利息を払う,ただし,2年目は無利息(又は利息免除)という条件で貸し付けた場合,1年目の末日に徴収する利息30万円は,利息制限法上適法な利息ということになります。
     合計法定利息額:30万円=100万円×15%×2年
     合計約定利息額:30万円=100万円×30%×(2年-1年)

このとき,無利息期間がない契約で借り主が30万円の利息を請求されている状態と上記約定で30万円の利息を請求されている状態は,どちらも,100万円借りて1年後に利息30万円請求されているので,利息制限法上,借り主の要保護性に何ら変わりはありません。

しかし,シンキの解釈によれば,前者は利息制限法による保護が必要であるから15万円の利息額は無効になるが,後者は利息制限法の保護が不要で全額有効ということになります。

ところが,前者でも,貸し主が顧客サービスで残り1年間の利息を免除すると全額が適法に変わり,後者でも,借り主が無利息期間を前倒しにして元本も全額弁済すると15万円が無効になります。そして,同一の基本契約に基づいて再度借り入れると,再び,無効となる利息額が変わるのです。

これでは,貸金業者は,みなし弁済の要件を充足できなければ,事後的に,それに見合った無利息期間を与えれば,法定書面の交付などしなくても受領した制限超過利息を保持できるということになります。あるいは,貸金業者は違法な利息の主張を受けた時点で今後は無利息にし,又は利息を免除すると主張すれば,日々,少しずつ受領済みの違法だった利息額を適法に変えていくことができることになります。
 しかし,このような解釈が合理的でないことは明らかです。
 利息制限法1条は,利息の約定のうち制限超過部分を無効とする規定であり,契約上,借り主に利息支払義務がある期間についてのみ問題となる規定です。
 特約が適用されて無利息となり,又は利息が免除された期間は,契約上,利息支払義務がない以上,制限する利息が存在しないので,利息制限法の関知するところではなく,あとは,借り主が約定利率にて利息支払義務を負う対象期間後の期間について,利息が利息制限法の制限を超えているか否かのみが問題となるのです。
 シンキは,その主張を説明するため,「借入金50万円を20日利用し,約定利息額が5200円という利息の契約がある場合」を挙げ,この場合,法定利息は4931円だから,徴収した5200円のうち4931円は適法であるなどと例をあげてきます。

しかし,これは,単に,50万円,20日間,利息5200円(年18.98%)で貸し付けた例です。利息制限法1条を適用すれば,利息の約定のうち年18%を超える部分(269円分/年0.98%分)が無効となり,269円が不当利得になります。無利息特約がなければこの結論になるのは当たり前です。

しかし,シンキの特約は,借入から7日間は無利息又は利息を免除する特約なので,発生する利息は,借入日の翌日から返済日までの全日数に対するものではなく,借入れの8日目から返済日までの日数に対する利息です。よって,そもそも,借入日の翌日から弁済日までの利息として,利息を請求受領していたかのような主張は,契約内容及び取引実態と異なります。

無利息特約下での利息計算例を挙げるのであれば,50万円を,貸付日から7日間無利息(又は免除),8日目から20日目までの13日間の利息5200円という約定で貸し付けたという例で説明しなければおかしい。利率で言い替えれば,貸付けから7日間は無利息(又は免除),8日目から20日目までは年29.2%という約定になります。

借り主に利息発生義務がない7日間は,利息制限法の関知するところではないので,利息支払義務がある8日目から20日目までの期間について,利息の約定年29.2%のうち年18%を超える部分(年11.2%分)は無効となり,利息5200円のうち1995円が不当利得となるというのが正しい計算です。

計算式で説明すれば,本件取引における利息の計算は,「借入残高×借入利率÷365日×利用日数(初回は7日間を除く)」であり,計算式は,シンキが公開しているとおり,
     利息=利用金額×借入利率÷365日(閏年は366日)×(利用日数-7日)
となります。
 よって,利息額を比較する場合の計算式は以下の通りとなり,1995円の超過利息です。
       約定利息:5,200円=500,000円×29.2%÷365日×(20日-7日)
       法定利息:3,205円=500,000円×18.0%÷365日×(20日-7日)
 結局,年29.2%の約定利率のうち年18%を超える部分は無効になり,7日間は無利息又は利息免除のため,利息額を比較しても,結論は同じです。  
 初日不参入の契約であれば,利息制限法で問題となるのは借入日の翌日からであり,利息制限法で計算するなら,初日不参入の契約を無視して初日から利息を計算してよいことになりません。借入日の翌日より7日間の無利息特約は,その期間利息0%であるから,初日を含めて8日間不参入の契約と同じです。当事者間に利息を支払う約束がない期間については,利息制限法をどう解釈しても利息が発生するということはないのです。
 そして,利息免除特約であっても同じです。借入から7日間は契約上利息が免除されているので,その期間に利息を計算する根拠はありません。

契約上,利息を免除した期間について,後にそれを覆して免除の効力を取り消すことができるかは,契約の問題であって,利息制限法の問題ではありません。そして,みなし弁済の適用が無い場合には,免除を取り消すことができるとする条項は,明示的にも黙示的にも存在しないのです。

制限超過利率を前提とした特約ではない

シンキは,約定利率を前提とした特約だから約定利率が適用されない場合は特約も適用されないと主張することもあります。

しかし,契約書のどこにも特約にそのような制限はありません(前掲東京地裁判決もそのような制限はないとしています)。

また,特約が適用される条件は,初回7日間,完済し再度の貸付から7日間であることのみとなっているので,借り主が借りては無利息期間中の完済を繰り返すと,何十年,取引を続けても,借り主は1円も利息を支払わないで済みます(実際に,この取引態様で長期間利息を1円も支払わずにいる方はいます)。顧客が無利息期間中の完済を繰り返し,何年,何十年間にも渡り,1円も利息を取れなくとも,シンキは,特約の適用を拒否することはできないのです。つまり,この特約は,約定利息どころか,法定利息すら取ることを前提としていないということです。

では,1円の利息も取れない可能性がある特約を設けた目的は何でしょう。

それは,他社との差別化による新規顧客の獲得,顧客の他社への流出防止です。

このことはシンキが公表しているノーローンの開発経緯から明らかです。

シンキは,「ノーローン」を開発する前から制限超過利率で貸し付けていた貸金業者であり,制限利率以下の約定利率となった現在も特約は維持されているのは,その目的が新規顧客の獲得,顧客の他社への流出防止であり,制限超過利息を支払う見返りとして設けられたものではないのです。

そのため,特約の目的は,当該借り主との契約を獲得し,取引を継続させたことにより実現しており,みなし弁済の適用の主張立証が出来なかったとしても,契約の獲得と取引の継続の事実は覆らず,特約が意図した目的は,シンキが意図したとおり実現されたままその利益をシンキは保持しているのです。

そもそも,制限超過利率を超える利息の約定は,もとより無効であり,みなし弁済の適用があれば,受け取った制限超過利息が有効な弁済になるだけなので,シンキは,制限超過利率を超える利息の約定が無効であることを前提に,競争力強化のため,7日間無利息特約付きのノーローンという商品を開発したことになります。

借り主は,あらかじめみなし弁済の適用を否定しない義務を負わず,そのような義務を定めても,貸金業法に違反し無効です。

シンキは,みなし弁済の要件を充足させれば,7日間無利息又は利息免除特約を付しても,特約により得る競争力を考えれば,利益になると見込んで,従前から行っていた制限超過利率による貸付に無利息特約を付したのです。そして,現にシンキは,無利息特約を売りに新規顧客を得て,より多く自社から借入れを繰り返させ,多額の制限超過利息を得ることに成功したのです。競争力強化という無利息特約の意図は,なんら裏切られることなく実現しています。

であれば,あとはシンキがみなし弁済の適用を主張立証すればよいだけです。約定利率による充当計算がみとめられないのは法律上の義務を遵守せず,又は要件解釈を過ったために,シンキがみなし弁済の適用を主張立証できないからであり,借り主が約定利息の支払いを拒否したからではありません(実際に借り主は約定利息をきちんと払っています)。

シンキは,約定利率の無効を主張するのであれば,無利息特約は適用されないと主張したりしますが,利息制限法は強行法規なので,制限超過利率を超える部分はもとより無効であり,借り主が無効を主張して初めて制限超過部分が無効になったのではなく,約定利率による充当計算ができないのは,単に,シンキがみなし弁済の主張立証をしないからに過ぎません。借り主が制限超過部分の無効を主張したから約定利率による充当計算ができなくなったなどという主張は,「いいがかり」というべきものです。

みなし弁済の適用を見込んで顧客にサービスしていたので,適用されないとサービスした分だけ損することになるとしても,自らがみなし弁済の要件を充足させられなかったのであるから,仕方がないとしか言いようがありません。顧客は契約通り返済しているのです。

みなし弁済の適用がなく制限超過利息を保持できないのはシンキの責任です。

シンキが法令を遵守せず,また,法令の解釈を誤ったために,みなし弁済が適用されなくなったからといって,1週間無利息という約束で契約・取引した借り主が,無利息期間に利息を支払わなければならない理由はありません。

シンキの主張は,みなし弁済の適用を見込んでサービスで配ったティッシュを返せと言っているのと同じです。

そもそも「制限超過利息の発生」など存在しない

~免除特約が免除しているのは対象期間の法定利息にほかならない~

特約は制限超過利息である約定利息の免除特約だから,法定利息は発生すると主張することがあります。どうやら,シンキは,免除したのは制限超過利率である約定利息であって,法定利息ではないと言いたいようです。

しかし,利息免除特約は,例えば初回7日間は年18%を超える部分を免除するなど,約定利息のうち法定利息を超える部分を免除する特約ではなく,対象期間(初回7日間)について利息を全部免除する特約になっています。よって,法定利息は免除していないという理屈は通りません。法定利息を超える部分を免除する特約ではないことは,約定利率を制限利率以内に変更した現在も免除特約を維持していることからも明らかです。

そもそも,免除特約で,免除される「利息」って何でしょう?

利息制限法は強行法規ですから,制限利率を超える部分は,そもそも無効でなので,制限超過利率による利息は実体的には発生しておらず,ただ,実体的には発生してない制限利率を超える額が利息として支払われたとき,みなし弁済の要件を満たせば,有効な利息の債務の弁済とみなされるだけです。超過利息など発生しないが,要件を満たせば支払われた超過利息額は有効な弁済ということで返さないでよいという過ぎません。

そのため,支払われる前の段階で「発生している制限超過利息」などそもそも存在しないのです。

取引の全期間について実体的に発生しているのは法定利息だけであり,その取引期間中のある一定期間について,利息を全部免除すれば,免除されたのは,法定利息にほかなりません。

シンキは「免除特約だから対象期間についても法定利息は発生する」と一生懸命主張しますが,そもそも,特約の有無にかかわらず,全期間を通じて発生するのは法定利息しかないので,問題は,利息免除特約が適用され現に免除された対象期間について,事後的に法定利息を主張できるか(遡って免除の効果を消滅させることができるか)という点です。これができるというためには,利息制限法を,契約上,利息支払義務が免除された期間について,利息免除特約・免除の効果をも無効とする法律であると解する必要がありますが,これが成り立ち得ないことは先に述べたとおりです。,

免除特約は,対象期間についても利息を全部免除する特約である以上,免除されたは対象期間中の法定利息にほかなりません。そして,免除特約が適用されて利息が全額免除された期間について,後に過払金返還請求を受けたときには,免除特約が無効となり,免除の効果が遡って消滅する根拠は,法律上も契約上も存在しないのです。

無利息だから「ノーローン」

ノーローンの広告・説明内容,商品開発の経緯,「無利息」という用語から,実際には「無利息」とは文字通り利息が発生しないという意味であり,シンキも当然利息が発生しないものとして商品開発しています。シンキのウェブサイトによれば,「利息をもらうのをやめる」という発想から商品開発が始まり,それを表すものとして「ノーローン」と命名し,「ノーローンは公的サービスを担う」「短期分野の収益を捨て去ることを決議」したとのことです。「無利息」とは文字通り「利息が発生しない」という意味で用いられ,商品化されているのです。

(リンク:ノーローンWEBサイト「ノーローン開発日誌」

利息が発生しないので,利息の計算式が「借入残高×借入利率÷365日×(経過日数-7日」となっています。利息は8日目から発生すると説明されています。利息の計算式自体が「無利息期間」に利息が算出できないようになっているのです。実際には利息が発生するなら上記計算式であるはずがありません。

例えば,借り入れて7日目に返す場合,上記計算式に当てはめて利息を算出できるでしょうか?

シンキは免除しただけと言いますが,そもそも免除する対象となる利息が存在しないのです。

ノーローンの広告・説明内容,「無利息」という用語,「無利息期間」とされている期間について利息が発生する場合が契約上定められていないことから,顧客が「無利息期間」について,場合により,利息を支払う意思を有していたなどということは,あり得ません。利息は当事者の合意,利息を支払う借り主の意思がなければ,発生しないので,無利息期間について顧客に利息支払義務が生じる余地はないのです。

シンキは,利息制限法所定の利率で計算し直すなら,無利息期間も含めて全部法定利率で計算すべきと主張してきます。しかし,利息制限法に基づく計算とは,利息制限法所定の利率で計算するという意味ではなく,利息制限法により有効と認めら得る契約条項に基づいて計算するという意味です。法定利息計算はあくまで契約に基づく計算なのです。利息発生は,利息を支払う合意があることが前提であり,利息制限法は利息を支払う合意がない部分について利息発生の根拠を与えるものではありません。

そのため,利息制限法は,利息の約定のうち,所定の利率を超える部分を無効とするだけで,その他の条項を無効としません。利息が発生しないという特約は利息制限法に反しないので有効のままです。また,利息計算式の「経過日数-7日」という部分から「-7日」が消えて無くなることもありません。よって,無利息特約は有効のまま,計算式もそのままなので利息が発生する根拠はないのです。

また,シンキは,無利息特約は,制限利率を超える約定利率を前提としているので,利息制限法に従って計算するなら無利息特約は適用されないと主張することもあります。しかし,利息制限法所定の利率を超える部分は当初より無効であり,借り主の主張を待って初めて無効となるものではありません。シンキは,借入利率が利息制限法所定の利率の範囲でしか効力を生じないことを知っていたので,そもそも無利息特約は,借入利率が利息制限法所定の利率の範囲でしか効力を生じないことを前提として定めらたものです。そして,借入利率を法定利率内に改正した現在でも無利息特約があります。無利息特約は,借入利率が制限超過利率であるかことを前提とした特約ではないのです。

シンキは「ノーローン」を始める前から制限超過利率の貸付をしており,無利息特約を設けたことで初めて,制限超過利率で貸付を始めたのではありません。無利息特約は,制限超過利息の支払いを得るために設けられたものではなく,シンキが顧客を獲得し,取引を継続させ,他社との競争力を強化するために設けられたものなのでです。約定利率が制限利率内になった現在でも無利息特約が維持されているのはそのためです。

無利息特約は,「ノーローン」を「ノーローン」たらしめている本質であって,商品として存在意義はそこにあります。「無利息期間中も実は利息が発生しています」という主張は,ノーローンの自己否定であり,この主張をした時点で,商品として終わっています。

要するに,シンキは,「みなし弁済が認められないなら,無利息期間はナシね。だって,みなし弁済は認められないは,1週間は無利息だでは,やってられないモン。」とでも言いたいのでしょう。しかし,前記の通り,利息支払義務は借り主にその意思がなければ発生しない(利息の約定がない)ので,「無利息期間」とされた「初回借入から7日間」と「完済後の借入から7日間」について,利息が発生するか否かは,借り主である顧客において,みなし弁済の不適用(利息制限法の適用)を主張する場合にはその期間について利息を支払う意思があったかどうかです。シンキが見込みをはずして,やってられなくなったかどうかは関係がありません。

「ノーローン」の広告・説明内容に,シンキが主張するような,利息が発生する場合の説明がどこにあるでしょう。皆さんも,ノーローンのWEBサイトで探してみて下さい。そんな説明はありません。(リンク:ノーローンWEBサイト「1週間無利息キャッシングNOLOAN」

「無利息」とは利息が発生しないという意味であり,そのため,利息計算式自体が無利息期間に利息が算出されない式になっており,「無利息期間」とされる期間について,顧客に利息を支払う意思がまったくなかったことは明らかです。

借り主に利息を支払う意思が認められない以上,利息を支払う黙示の合意が成立する余地はありません。

無利息期間について,利息が発生す契約上の根拠はないのです。

それを避けたければ,シンキは,WEBサイトのTOPページにでもその旨大きく書いておくしかないでしょう。

「1週間無利息キャッシングNOLOAN」「ノーローンならなんどでも1週間無利息」「つまり何度でも1週間無利息」「ただし『無利息』とは利息が発生しないって意味ではありません」って・・・。

広告・契約書に記載のない利息を主張する貸金業者からの借金は,危険

~ 記載のない費用は請求しない,これは最低限のルール ~

~ 契約上の用語が通常の意味を持たないなら,何を請求されるか分からない~

「無利息期間」と謳いながら,実は利息が発生するという主張は,非常に悪質です。

いつからいつまでの期間について利息を支払う必要があるか,それは,金銭消費貸借契約の本質的な内容です。借り主にとって,その業者から借入をするかどうかを決定する上で極めて重要な事項になります。そうであるからこそ,無利息特約を提供する貸金業者はそれを強調した広告をします。

「ここからここまで無利息」と言われて,誰がその期間に利息が発生すると理解するでしょうか。

広告・契約書に無留保で「無利息期間」と説明・記載しながら利息を主張することは,記載・説明のない利息を顧客に請求することです。

違法な利息・損害金・違約金等を請求する貸金業者は多くいても,記載も説明もしていない利息を請求したりは,まず,しません。ヤミ金だってご丁寧に「トイチです」って説明するでしょ?

無利息期間について利息が発生するなどという主張は裁判ではおよそ認められないとしても,広告・契約書に記載・説明のない利息を主張してくるおそれがあるというだけで,その貸金業者から借り入れるのは危険ということができます。

しかも,その主張は,契約の解釈や黙示の合意など,借り主にとって予め把握できないものを根拠にしているという点も問題です。記載のある条項に基づく請求であれば,それがどんなに違法であっても借り主は,そのような請求をされることを把握して契約できますが,契約の解釈だの,黙示の合意だのといわれたら,後に何を言い出されるか分かりません。

広告・契約書に記載・説明のない費用は請求しないというのは最低限のルールです。

これが守れない貸金業者から借り入れるのは,それがどんなにお得な契約に見えても,やめておく方が賢明です。

また,広告・契約書で使用される用語は,通常意味で使用されることが前提とされています。「無利息期間」という用語は,「利息が発生しない期間」という意味です。利息が発生する「無利息期間」という意味がありえるなら,利息が発生しない「有利息期間」もありえることになるので,結局,契約上,利息が発生するのかしないのかさっぱり分からなくなります。その貸金業者が独自の意味で用語を使用している場合,通常の意味で契約内容を理解することができないので,契約書からは何を請求されるのか分からなくなります。言葉がまともに通じない貸金業者からの借入れは,後の何を言い出されるか分からないので,やめておく方が賢明です。