特定の事務所へ誘導する口コミ・ランキング広告に注意
そのサイトの一番下などを見てみましょう。「広告掲載について」「広告掲載のお問い合わせ」などとあったら,単なる広告サイト。「おすすめの事務所」から広告料をもらってすすめているだけ。
~広告料をもらっている特定の事務所へ誘導する単なる広告が多い~
事務所選びのため,口コミサイトや,実際にその事務所の利用者と称する者のブログ,あるいは質問サイトでの質問・回答を参考にする方は多いと思います。しかし,実際には,特定の事務所へ誘導するサイトが多く,ほとんど当てになりません。
人気の事務所ランキングなどがありますが,これも当てになりません。
口コミサイト・ランキングサイトを装って,特定の事務所へ誘導するネット広告業者の広告目的のサイトとして捉えておくのが賢明です。
広告目的のランキングサイト・口コミサイトの特徴は,多くの事務所の情報を掲載した上で,最終的には,「おすすめの事務所」として,「1位」「2位」などと特定の事務所の申込みサイトのリンクが張られているところにあります。特定の事務所への誘導を目的としているので,他の事務所の情報は,ランキングサイト・口コミサイトの体裁を整えるために掲載されているもので,各事務所のホームページの記載をもとに適当に書かれたものに過ぎません。
競合する他の事務所について悪く書かれている場合もあります。
ランキングサイト・口コミサイトの設置・運営もコストがかかりますが,その資金がどこから出ているか考えて見て下さい。お金を払った事務所を上位に挙げるだけの口コミサイト・ランキングサイトは,当てにならないどころ,質の悪い事務所を優れた事務所と誤認させる恐れがあり問題があります。
報道でも取り上げられており,2015/1/28の朝日新聞によると「お金払うから1位にして下さい」と商品紹介サイト運営者に頼む企業が相次いでおり,報酬を払えば上位に掲載するとサイト運営者が勧誘する例もあり,日本アフィリエイト協議会は「やらせランキング」としてサイト運営者に注意を呼びかけているとのことです。
法律家である弁護士・司法書士が,お金を払って,口コミサイト・ランキングサイトの上位への掲載を依頼するのは,職業倫理の点から,非常に問題です。
当事務所は,このような口コミサイト・ランキングを装った広告は一切していません。
その口コミサイト・ランキングサイトに次のような特徴があったら,そのサイトはお勧めの事務所から広告料をもらっていると考えておく方が賢明です。
- お勧めとしていくつか事務所が挙げられ,その事務所の申込みサイトへリンクされている
- 広告掲載を募集している(多くはページの一番下などに記載があります)
- どういう基準でランキングしているのか不明
- 口コミ・ランキングの基礎資料が不明(経験・聞いた話など裏付けが取れないものやホームページの記載から分かる範囲のことしかない)
- どの会社が運営しているのか不明(会社名・所在地の記載がない)
- 運営資金の出所が不明
~事務所の客観的な評価・順位付けは実際問題として無理~
現実的に,事務所のランキングなどを作成することはできないでしょう。例えば,皆さんがある病気になり,病院へ行ったとします。その体験に基づいて「全国名医ランキング」「評判の良い病院ランキング」なんてものを作れるでしょうか?また,自分が受けた診療の質を客観的に評価できるでしょうか?
そのサービスを評価するには実際に利用してみる必要があります。そして,サービスの質を比較するには複数の同種のサービスを利用してみる必要があります。
飲食店であれば,多くの飲食店を実際に利用することができるので,ある程度食べ歩きすればその人の中での評価,順位というものはできます。
しかし,法律事務所については,多くの人にとっては一生に何度も利用するものではなく,また,複数の事務所の相談を受けるにも限界があります。
葬儀屋と同じで,他の体験との比較ができないので,その法律事務所の質の善し悪しを客観的に判断することは難しく,実際には質の悪い事件処理であるのに,そんなものと思ったり,質の良い事件処理なのに不満を抱いたりということが生じるはずです。
また,ほとんどの人が外食しても口コミサイトに投稿しないのと同様に,法律事務所の利用者の多くは口コミサイトに投稿などしないので,法律事務所の質を同一の基準で客観的に評価できるだけの情報を集められないはずです。
にもかかわらず,ランキング形式で法律事務所に順位をつけて掲載できるのはなぜでしょう?
特定の事務所を特に勧めることができるは,なぜでしょう?
常識を持って考えれば,多くは,単なる口コミ・ランキングサイトを装った広告であると判断できると思います。
当事務所では,他の事務所とのトラブル・セカンドオピニオン相談も行っていますが,回収率が低い割に報酬が高くて手元にほとんど残らないという相談が多い事務所が,ネット上では人気の事務所として紹介されていたりします。
ネット上の口コミは,口コミ広告である可能性を念頭に見ておく必要があります。
事務所選びは,その事務所に現に足を運んで,実際に直接会って話を聞くという地道な作業で行うしかありません。