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リボ払い・1回払い選択方式の一連性

クレディセゾンの「セゾンカード」を中心に解説します。

問題の所在・・・1回払い利用分は独立した取引?

クレディセゾンの「セゾンカード」や三菱UFJニコスの「NICOSカード」等のキャッシングは,利用するときにその利用分をリボルビング払いで返済するか,1回払いで返済するか選択する利用時選択方式となっています。取引履歴も両者は区別されることなく1つの取引として開示されますが,過払金返還請求をすると,クレディセゾンも三菱UFJニコスも1回払いとリボ払いは独立した取引であるから1つの取引として計算できない,1回払い取引は一連で計算できない(過払金充当合意はない)と主張してきます。

リボ払いと1回払いを分け,1回払いは一連ではないという前提に立つと1回払い利用分の過払金には消滅時効が成立することになり(H19に超過利率を止めているため),リボ払いについては1回払いを抜いたところに中断期間が生じ,取引の分断の争点が生じます。貸金業者にとっては,1回払いが選択された利用分は別取引であるという主張は返還する過払金額を減らせる主張になります。

しかし,過払金充当合意の存否は基本契約(カード契約)の合理的な解釈により判断されるものですので(最判H19.6.7),リボ払いか1回払いかという返済方式の抽象的な議論ではなく,その取引のカード契約(基本契約)の内容,規約条項がどのような内容になっているかにより決まります。

クレディセゾンの「セゾンカード契約」,三菱UFJニコスの「NICOSカード契約」は,規約上,リボ払い取引・1回払い取引という2つの貸付取引ができる契約ではなく,単一の利用枠と単一の取引名(「キャッシングサービス」等)が設定された1つの貸付取引ができる契約で,リボ払い・1回払いは1つの貸付取引の残高を構成する利用分に過ぎず,両者は一連で計算すべきもの(1回払いを含めて過払金充当合意がある契約)です。

貸金業者側の主張に対して,どのように主張すべきか解説します。

2つのタイプ

クレジットカードの貸付取引にはさまざまなタイプがありますが,過払金返還請求で問題となるクレジットカードの貸付取引は,大きく次の2つのタイプに分けることができます。

リボ払・1回払,選択方式タイプ

  • 1つの取引名(「キャッシングサービス」等)が付され,規約上,区別して規定されていない
  • リボ払・1回払は固有の利用枠を持たず,規約上,単一の利用枠が設定された1つの貸付取引内で利用毎にいずれかを選択できるようになっている
  • リボ払・1回払利用分は両者で1つの残高を構成する
  • リボ払・1回払のいずれも超過利率である(※法改正以前)

リボ払,1回払,独立取引タイプ

  • リボ払・1回払は異なる取引名が付され(リボ払「カードローン」・1回払「キャッシングサービス」等),規約上区別して規定されている
  • リボ払・1回払は固有の利用枠を持ち,規約上,2つの貸付取引ができるようになっている
  • リボ払・1回払利用分はそれぞれ独立した残高を構成する
  • リボ払は適法金利,1回払は超過利率である(※法改正以前)

リボ払い・1回払い選択方式タイプは,規約上,単一の利用枠と単一の取引名が付された1個の貸付取引です。クレディセゾンの「セゾンカード」はその典型例で,1つの利用枠をもつ「キャッシングサービス」という取引名が付された1個の貸付取引ができるカード契約です。なお,リボ払いの外に選択できる返済方式が1回払いを含む回数指定払いである場合もあります。

リボ払い・1回払い独立取引タイプは,規約上,それぞれ固有の利用枠と固有の取引名が付された2個の貸付取引です。クレディセゾンの「ユーシーカード」はその典型例で,固有の利用枠と「ローンサービス」という固有の取引名を持つ制限利率以下のリボ払い方式の貸付取引と,固有の利用枠と「キャッシングサービス」という固有の取引名を持つ超過利率の1回払い方式の貸付取引の2つの貸付取引ができるカード契約です。

貸金業者側は,これらの区別をせず,選択方式タイプであっても,あたかも独立取引タイプであるかのように主張してきます。独立取引タイプについては,1回払い取引に過払金充当合意を否定する裁判例は多くあるので,その裁判例を多数提出して,あたかも選択方式タイプにも過払金充当合意が否定されたかのような主張をしてきます。

どちらのタイプか,規約内容を具体的に指摘して,明らかにする必要があります。

リボ払い・1回払い,選択方式タイプの例

「セゾンカード」(クレディセゾン)

「NICOSカード」(三菱UFJニコス)

リボ払い・一回払い,独立取引タイプの例

「ユーシーカード」(クレディセゾン)

「DCカード」(三菱UFJニコス)

「JCBカード」(ジェーシービー)

「ダイナースカード」(三井住友トラストクラブ)

選択方式タイプと独立取引タイプは判断過程が異なる

独立取引タイプの場合,リボ払い取引はそもそも適法な金利の取引なので過払金返還請求の対象になりません(ショッピング取引と同じ扱い)。訴訟では,超過利率の1回払取引の計算方法のみが問題になり,1回払取引を一連として計算できるか,すなわち1回払い取引に過払金充当合意は存在するかが問題になります。

これに対して,選択方式タイプの場合,リボ払いも1回払いも超過利率なのでリボ払いと1回払いを一連で計算できるかが問題になります。そして,リボ払い利用分に過払金充当合意があることに争いはありません(貸金業者側も争わない)。そのため,過払金充当合意は,同じ利用枠内の1回払い利用分には及ばないか(1回払い利用分は除外するものか)が問題になります。

貸金業者は,あたかも独立取引タイプであるかのように主張をし,1回払い取引に過払金充当合意はないと主張します。

選択方式タイプは独立取引タイプとは商品設計,規約内容が異なることを指摘して,リボ払いも1回払いも同じ利用枠内の1つの残高を構成する利用分であるのに,1回払いを選択した利用分には過払金充当合意は及ばないと解釈することは合理的ではないと主張する必要があります。

過払金発生時に存在する他の利用分への充当

過払金充当が問題になる場面を分ける

貸金業者は,選択方式タイプについて,1回払い利用分をリボ払い利用分から切り離し,1回払い利用分を個別に計算した計算書を提出してきます。

「1回払い利用分については過払金充当合意はない」ということを理由にしていますが,過払金充当合意は,ある利用分への支払いで過払金が発生したときに他の利用分が存在しない場合に,過払金はその後の新たな利用分へ充当されるかという場面で問題になる合意です。

過払金が発生したときに他に利用分がある場合にその利用分に充当されるかは,過払金充当合意の問題ではなく,次の最高裁判決が示した通り,継続的な金銭消費貸借取引であるか否かの問題になります。

あるリボ払い又は1回払い利用分への支払いで過払金が発生した当時,他のリボ払い又は1回払い利用分が存在するときは,過払金は当然の他の利用分へ充当されます。他に利用分がなかった場合だけ,将来の利用分へ充当されるか,過払金充当合意の問題が発生します。

過払金充当合意だけの問題にされないように場面分けをすることが大切です。

貸金業者が最判H15.7.18を無視していることを指摘する

最高裁判決平成15年7月18日は,

「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において、借主がそのうちの一つの借入金債務につき法所定の制限を超える利息を任意に支払い、この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合、この過払金は、当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り、民法四八九条及び 四九一条の規定に従って、弁済当時存在する他の借入金債務に充当され(る)」

と判断しています。

選択方式タイプの貸付取引は,カード契約(基本契約)に基づく単一の利用枠と名称を有する継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引であることは明らかですから,発生した過払金は当時存在する他の利用分へ当然に充当されなければなりません。そして,同最高裁判決の事案は,1回払いの事案(手形貸付)ですから,返済方式が1回払いであることを理由に,同最判に基づく充当を否定することはできません。

最高裁判決は,過払金発生時に他に借入金債務が存在していればそれに当然に充当されるが,存在しないのであれば,その過払金を将来の借入金債務に充当するには過払金充当合意が必要だとしたものですので,過払金発生時に他に借入金債務が存在しているなら,過払金充当合意の有無を問題にすることなく当然に充当されるのです。

最高裁判決平成19年10月19日は,回数指定払い取引について,原審札幌高等裁判所が借入金債務はすべて独立の取引であるとした上で,借入れ毎に個別計算したのに対して,上記最判平成15年7月18日を引用した上で,

「本件各取引は,同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引に当たることが明らかである。そうすると,本件各取引に係る借入金債務のうちの一つにつき,利息として支払われた弁済金のうち制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合は,上記特段の事情のない限り,当該過払金は弁済当時存在する他の借入金債務に充当されるというべきである。」

として,上記過払金を弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはできないとした原判決を破棄しています。

過払金充当合意の存否の問題の前に,選択方式では,リボ払い利用分も1回払い利用分も,単一の利用枠が設定され単一の取引名が付された取引内の借入金債務であることを規約の条項を挙げて指摘し,同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引であることを明らかにして,貸金業者の計算方法が最高裁判決平成15年7月18日を無視していると指摘することから始める必要があります。

他に利用分が存在する部分

  • ある利用分に過払金が発生したとき,他に利用分が存在する
  • 過払金は他の利用分に当然に充当されるか?
  • 「継続的な金銭消費貸借取引」であれば当然に充当される

他に利用分が存在しない部分

  • ある利用分に過払金が発生したとき,他に利用分が存在しない
  • 過払金はその後発生した利用分に充当されるか?
  • 基本契約の解釈として「過払金充当合意」が含まれれば充当される

最判平成15年7月18日に基づく充当がされることを明らかにすれば,その後の新たな借入金へ充当する合意の存在も主張しやすくなります。

将来の利用分への充当・・・過払金充当合意の存否の問題

具体的な規約内容の主張が必要

貸金業者側は1回払い方式,リボ払い方式という返済方式の違いから過払金充当合意はないと主張してきます。

しかし,過払金充当合意は,基本契約の合理的解釈により基本契約に含まれるかという問題ですから,返済方式という抽象的な議論で決まるものではありません。問題になっているカード契約の規約を提出し,具体的に規約内容を主張し,その解釈として過払金充当合意が含まれていると主張する必要があります。

ところが,原告側が規約の具体的内容を主張せず,貸金業者と一緒になって抽象的な議論を展開している例が見られます。契約内容の具体的な主張立証がなければ,裁判所も過払金充当合意を導くことができません。選択方式タイプの事案で,1回払い利用分を独立した取引と判断した裁判例は多くありませんが,独立した取引であると判断した裁判例を見ると,原告が規約内容を主張しておらず返済方式の抽象的議論に終始しており,基本契約の合理的な解釈がされていません。

裁判所も基本契約の内容を具体的に主張してもらわないと解釈のしようがありません。

ここで,貸金業者側は,規約から,リボ払い,1回払いの定めを抽出してきますが,リボ払いで支払うことが定められているから「リボ払い方式」,1回払いで支払うことが定められているから「1回払い方式」というのですから,返済方式の定めをいくら挙げても返済方式の議論でしかありません。

利用分はリボ払い方式,1回払い方式のいずれかと規約上定められているが,他の規約の定めからこれらは1つの取引の残高を構成する利用分に過ぎず,過払金充当合意はいずれの利用文化にかかわらず及ぶと主張する必要があるので,重要なのは,返済方式の定め以外の条項がどのようになっているかです。

選択タイプでは,1回払い取引とリボ払い取引という2つの取引は存在せず,1個の貸付取引の残高を構成する利用分でしかないことを規約内容を拾って主張することが必要です。

次では,クレディセゾンの選択方式タイプの代表例である「セゾンカード」の貸付取引を例にして,独立取引タイプの代表例であるクレディセゾンの「ユーシーカード」と比較しながら解説します。

※説明文中()内の条文はそれぞれのカード規約の条項です(セゾンカード契約については1996/10/24改訂版のもの,ユーシーカード契約については1995/6/1改訂版のもの)。

  • 「セゾンカード」 :リボ払い・1回払い「選択方式タイプ」
  • 「ユーシーカード」:リボ払い・1回払い「独立取引タイプ」

固有の名称の有無

サービス名称は他との異同を識別する指標であり,識別するために付けるものですから,規約上,1つの名称が付けられているか否かは,契約当事者がそれを1つのものとして扱っているか否かを知る上で重要です。

独立取引タイプのユーシーカード契約では,規約上,1回払い方式の取引については,「キャッシングサービス」(29条),リボルビング払い方式の取引には「ローンサービス」(30条)とのそれぞれ別に名称が付され区別されています。契約当事者としては,ショッピング取引のほかに,貸付取引が2つあると認識,理解するのが通常です。

これに対して,セゾンカード契約では,「キャッシングサービス」(第3章11条)と1つの名称が付されてた貸付サービスがあるのみです。契約当事者としては,ショッピング取引のほかに,1つの貸付取引があると認識,理解するのが通常です。

固有の利用枠の有無

カード契約では,利用枠(極度額)毎に取引内容が把握され,当事者は利用枠毎に1取引と認識し,さらに利用枠内で複数の取引を行っているとは認識しないのが通常です。

ユーシーカード契約では,1回払い取引の「キャッシングサービス」,リボルビング払い取引の「ローンサービス」にそれぞれ固有の利用枠が設定されています(それぞれ29条1,30条2(イ))。したがって,それぞれ,1回払い利用分は1回払い取引の残高を構成し,リボルビング払い利用分はリボルビング払い取引の残高を構成し,利用分毎に残高が独立していることになります。当事者間には,1回払い方式の利用分で「キャッシングサービス」の残高が,リボルビング払い方式の利用分で「ローンサービス」の残高が,別個に2つ存在するのです。

これに対して,セゾンカード契約では,返済方式の区別なく,1つの「キャッシングサービス」に1つの利用枠が設定されています(11条(2))。1回払い方式が選択された利用分,リボルビング払い方式が選択された利用分は,それぞれ利用分毎に独立した残高を構成しません。返済方式の異同にかかわらず残高全体の一部となり,当事者間には,「キャッシングサービス」の残高が1つだけ存在するのです。

貸付の性質(超過利率か否か)

ユーシーカード契約では,1回払い取引である「キャッシングサービス」の約定利率は制限超過利率であり(年27.8%),リボルビング払い取引である「ローンサービス」の約定利率は制限利率以下です(年18%又は年15%)。返済方式の違う貸付取引で,制限超,制限内に分けられています。現在は法改正により超過利率は廃止されたのでいずれも制限利率以下ですが,もともと制限超過利率の取引,制限利率以内の取引として分けられていたものです。

これに対して,セゾンカード契約の貸付取引「キャッシングサービス」は,選択した返済方式に関わらず年29.6%であり(1996年当時,※時期により変わります),その利息の定めは返済方式毎に定められておらず,キャッシングサービスへの概括的な規定になっています(12条(2))。

かつて,みなし弁済規定が存在したころ,貸金業界では,制限超過利率による貸付取引を「キャッシング取引」と呼び,制限利率以内の貸付取引を「カードローン取引」と呼んで,両者を意識的に分けるのが慣例になっていました。

独立取引タイプのユーシーカードや,JCB,三井住友トラストクラブなど多くの貸金業者が,1回払い取引を「キャッシング」(またはキャッシングを含む名称)で呼び,リボルビング取引を「カードローン」(またはローンを含む名称)で呼んで分けていました。貸金業者は,制限超過利率の取引と制限利率以下の取引を明確に分け,超過利率の貸付取引(キャッシング),制限利率以下の貸付取引(ローン)をそれぞれ1つの取引として商品設計し,規約化したのです。

独立取引タイプのユーシーカード,JCB,三井住友トラストクラブなどのカード契約も,選択方式タイプのセゾンカード契約も,いずれも貸付機能付きのクレジットカードですが,前者は,貸付機能として,別個の利用枠を有する,超過利率の貸付取引(キャッシング)と制限利率以下の貸付取引(ローン)の2つの貸付けを提供する商品であり,後者は,貸付機能として,単一の利用枠を有する超過利率の貸付取引(キャッシング)1つを提供するカード契約であり,両者は商品設計,契約内容を異にしています。

独立した取引かは返済方式ではなく,規約の定めの問題であること

ユーシーカードで1回払い取引とリボ払い取引の2つの貸付取引が存在する理由は,返済方式が違うからではなく,規約上,それぞれ固有の利用枠を設定され,固有の名称を付けられ,独立の残高を有する超過利率の貸付取引と制限利率以下の貸付取引という2つの貸付取引になっているからです。

これに対してセゾンカード契約では,1回払い方式,リボルビング払い方式のいずれの利用であるかを区別せず,単一の利用枠が設定され「キャッシングサービス」という1つの取引名を付けられた1つの貸付取引になっています。単一の利用枠内で繰り返される貸付けであって,返済方式にかかわらず同じ超過利率の約定利率の条項(12条(2))が適用され,各利用分は返済方式の異同にかかわらず「キャッシングサービス」の1つの残高全体を構成するのですから,規約上,独立した取引になっていないのです。

利用枠のまとまりで権利関係を把握するのが通常であること

カード契約者は,利用枠毎に1つの取引と捉え,残高を把握するのが通常です。1つの名称,1つの利用枠の取引内で,更にその内部が複数に分かれ,残高がある利用分と過払金がある利用分を混在させる意思はないと考えるのが合理的です。

セゾンカード契約は,単一の利用枠を有する超過利率の貸付取引が1つだけできる契約内容になっており,一回払い取引,リボルビング払い取引という別個の貸付取引は存在せず,返済方法に関わらず利用分は貸付取引の残高を構成する一部であるに過ぎないのですから,過払金充当合意が1回払い利用分には及ばないと考える理由はありません。

いずれの利用分に生じた過払金であるか区別できないこと

先に述べたとおり,過払金が発生した当時,他に利用分が存在するときは,過払金はその利用分に当然に充当されます。リボ払い利用分に発生した過払金が当時他に存在する1回払い利用分に充当される場合もあれば,その逆もあります。このように相互に充当された結果発生する過払金は,リボ払い利用分,1回払い利用分のいずれかについての過払金とは言えません。貸付取引全体について発生した過払金です。そうすると,問題になるのは,セゾンカード契約の1個の貸付取引全体に発生した過払金の充当になります。充当しようとする過払金が取引全体のものであれば,充当される利用分を返済方式で区別する理由はありません。

最高裁判決平成19年6月7日は,「契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,上記過払金を,弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいる」として,どの返済方式により発生した過払金か,充当される借入金債務が過払金が発生した借入金債務と同じ返済方式か問題にしていません。

この点,リボ払いとリボ払い以外の返済方式との選択方式について過払金充当合意を認めた東京高等裁判所判決平成25年8月30日は,選択方式タイプの取引で,リボルビング払いではない利用分を含めて過払金充当合意による充当がされるとした根拠として,次のように述べています。

「仮にこのように解しないとするならば,返済方法を選択しつつ繰り返し金銭消費貸借取引を行うための同一の基本契約の下での取引であっても,リボルビング払の取引への弁済で発生する過払金については一連の充当計算をする一方で,リボルビング払の取引への弁済で発生した過払金はその弁済当時に回数指定分割払の取引から生じた借入金債務があっても充当せず,逆に回数指定分割払の取引への弁済で発生した過払金はその弁済当時にリボルビング払の取引から生じた借入金債務があっても充当せず,また過払金の発生する弁済当時に他の借入金債務が存在しない場合,その弁済の対象がリボルビング払の取引でかつその後に発生した借入金がリボルビング払の取引によるものであれば過払金を充当するが,いずれか一方がそうでなければ充当しないという,複雑で,かつその結果生じる法律関係も煩瑣なものとなる内容の充当合意をしたということになるが,前示のような基本契約を締結する借入れ希望者及び貸金業者の間でそのような合意をしたと解するのは困難である。」

カード契約者の通常の意思に適った常識的な判断です。

セゾンカード契約では,リボ払い・1回払い利用分全部で1つの利用枠内の1つの残高を構成し,そのときどきの利用可能額が算出されます。そうであるのにリボ払い利用分には過払金充当合意による充当がされるのに,同じ残高を構成する1回払い利用分には充当されないのであれば,結果的に,リボ払い利用分の残高と1回払いの残高は別々に存在することになります。しかし,そのような状態が生じることは,単一の利用枠と名称を有する1個の貸付取引を提供するセゾンカード契約の規約内容と整合しません。

最高裁判決平成19年6月7日の事案と同じであること

セゾンカード契約は,過払金充当合意を肯定した最高裁判決平成19年6月7日の事案の基本契約と同様の内容です。

最高裁は,リボ払い利用分,1回払い利用分を区別することなく借入金債務として,いずれの返済方式が選択されたかを問わず過払金充当合意による充当を肯定しています。

最高裁の事案の規約内容(問題になった2つの契約のうち1つのもの)は次の通りです。

    【最判H19.6.7の事案の規約内容】

  1. 会員は,借入限度額の範囲内において1万円単位で繰り返し金員の借入れをすることができる。
  2. 翌月に一括して返済する方法又は毎月の借入残高に応じて定められる一定額を返済する方法(いわゆる残高スライドリボルビング方式)のいずれかから会員が選択する。
  3. 借入限度額の範囲内において1万円単位で繰り返し金員を借り入れることができ,借入金の返済の方式は毎月一定の支払日に借主の指定口座からの口座振替の方法によることとされ,毎月の返済額は前月における借入金債務の残額の合計を基準とする一定額に定められ,利息は前月の支払日の返済後の残元金の合計に対する当該支払日の翌日から当月の支払日までの期間に応じて計算することとされている。

セゾンカード契約では次のように最高裁の事案と同様に定められています。

    【セゾンカードの規約内容】

  1. 会員は,借入限度額の範囲内において1万円単位で繰り返し金員の借入れをすることができる(11条)。
  2. 翌月に一括して返済する方法又は毎月の借入残高に応じて定められる一定額を返済する方法(いわゆる残高スライドリボルビング方式)のいずれかから会員が選択する(12条)。
  3. 借入限度額の範囲内において1万円単位で繰り返し金員を借り入れることができ(11条(2),借入金の返済の方式は毎月一定の支払日に借主の指定口座からの口座振替の方法によることとされ(6条),毎月の返済額は前月における借入金債務の残額の合計を基準とする一定額に定められ,利息は前月の支払日の返済後の残元金の合計に対する当該支払日の翌日から当月の支払日までの期間に応じて計算することとされている(12条(2))。

利息の約定(12条(2))をさらに正確に指摘すると次のように定められています。

「(2)融資利率は,実質年率29.6%とし,利息は毎月締切日の融資金残高に対し前回の支払日から次回の支払日までの日数に応じた日割計算によって求めた金額を支払うものとします。但し,第1回目の利息については,融資実行の日から第1回目支払日までの日数に応じた日割計算によって求めた金額とします。」

上記のセゾンカード契約の利息の約定は,リボルビング払い利用分だけを対象にした条項ではなく,1回払い利用分,リボルビング払い利用分の区別なく定められた利息の約定です(1回払い利用分は2回目がないので事実上前段が適用される状態がないだけです)。

最高裁が過払金充当合意を肯定した事案と同様の規約内容のセゾンカードについて,最高裁の判断と異なり,1回払い利用分には過払金充当合意が及ばないとする理由はありません。

単一の利用枠内の選択方式の貸付取引については,利用分毎に選択された返済方式の異同にかかわらず,東京高等裁判所判決平成26年4月16日,東京高等裁判所判決平成25年8月30日,福岡高等裁判所判決平成28年4月26日は, 1個の貸付取引として過払金充当合意を認めており,仙台高裁判決平成24年5月24日は,基本契約に過払金充当合意が認められる以上は,分割払いが選択された利用分について過払金充当合意が及ばないとすべき理由はないとしています。

セゾンカードについては,東京地方裁判所判決令和3年8月26日が,規約内容を丁寧に検討して,1回払い利用分にも過払金充当合意を肯定しています。

規約内容を丁寧に主張すれば,1つの取引であること,リボ払い利用分には認められることに争いがない過払金充当合意が1つの取引内の他の利用分に及ばない理由はないとを明らかです。

※1回払い独立取引タイプの一連性

以上は,リボ払い・1回払い選択方式タイプについて,返済方式の区別なくすべてを1つの取引として一連計算できるかをクレディセゾンの「セゾンカード」を例に説明したものです。

リボ払いと1回払いがそれぞれ独立の利用枠を有する独立取引タイプについて,1回払い取引に過払金充当合意が認められるかについては現在激しく争われているところですが,独立取引タイプの代表例であるクレディセゾンの「ユーシーカード」の1回払い取引については,東京高等裁判所判決平成29年8月2日が規約内容を検討して一連性を肯定しています。

(詳しくはこちらをご覧下さい)