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費用関係_質問と回答

弁護士・司法書士の報酬規定・指針を知りたい

債務整理事件(過払い金返還請求事件を含む)については,現在,弁護士は日本弁護士連合会「債務整理事件処理の規律を定める規程」(H23.2.9)及び同規則により,司法書士は日本司法書士連合会「債務整理事件における報酬に関する指針」(H23.5.26/H28.4.27改正)により,それぞれ報酬の項目及び上限が定められています。規程は税別表示で定められていますが,下表では分かりやすく税込み表示にしてあります。各事務所の費用は税込み表示か税別表示か確認する必要があります。

また,事務所間の費用を比較する際には曖昧な報酬の定め方には注意が必要です。弁護士・司法書士は,規程・指針上,それぞれ定められた以外の名目の報酬を受領することはできません。訴訟費用名目や各種手数料名目での報酬膨らましには注意が必要です。事件処理の適正は個々の専門家のモラル・遵法意識にかかっており,下表の上限内の費用設定か否かは,その専門家のモラル・遵法意識の程度を知る上で重要な手がかりとなります。

ここで,司法書士の過払い金回収報酬は「代理人として過払い金を回収したときは」という条件がついています。司法書士は訴額140万円を超える過払い金について代理人として交渉・訴訟・和解ができないため扱わないことが前提とされています(司法書士法3条)。(司法書士の権限の制限

   ※税別表示です

  弁護士 司法書士
解決(定額)報酬

1社20,000円

1社50,000円

債務の減額報酬

10%

10%

過払い金回収報酬
(訴訟によらない回収)

20%

20%

過払い金回収報酬
(訴訟による回収)

25%

25%

規程・指針無視の高額の費用設定に注意

現在,弁護士・司法書士の報酬は自由化されていますが,弁護士会・司法書士会が規程・指針を定めるのはそのような社会的要請があるからなので,ほとんどの弁護士・司法書士は規程・指針に従っています。

ところが,一部,従わない事務所があります。あくまで指針に過ぎないという考えがあるかと思いますが,高額の報酬などが問題となり定められた規程・指針を無視するのは,法律家のモラルとしては問題があります。

そして,規程・指針の遵守・不遵守は,事務所の規模とは関係がありません。

最近では,テレビCMなどで大々的に広告を展開している司法書士法人新宿事務所(代表阿部亮司法書士)について,指針の上限を逸脱した報酬問題や回収した過払金全額が報酬・経費に充てられ,トラブルになっていると報道されています。

(参考:司法書士法人新宿事務所(代表阿部亮司法書士)の指針を逸脱した報酬問題)

あのテレビCMでおなじみの法人で不祥事・トラブル続出 委任状偽造の疑いも

(BusinessJournal 2015/10/28)

「経済的利益の○○%」という費用設定に注意

上記のように,規定・指針上は,税別で,減額報酬は「減額した金額」に対する割合,過払金回収報酬は「回収した過払金額」に対する割合で定められているので,どの事務所もその範囲で,減額報酬,過払金回収報酬を設定しています。

ところが,減額報酬,過払金回収報酬という区分ではなく,「得た経済的利益に対する○%」を報酬としている例があります。この費用設定に言う「経済的利益」とは減額金額と回収過払金額の合計額とされることが多いので,例えば,「経済的利益の20%」と設定されている場合,実質的に,減額報酬も過払金回収報酬も20%であるのと同じになります。

また,「経済的利益の9%~25%」など,一見,段階的に報酬率が高くなるかのような広告がされていても,実際には「経済的利益が400万円以下の部分は25%,400万円を超える部分は9%」などというように,高額事案でない限り,単に,事実上,減額報酬も過払金回収報酬も25%となり,事務所が,規制・方針に定められた上限を超える報酬を得られる設定になっていることがあるので注意が必要です(大々的に宣伝している大手事務所でこの費用設定をしている事務所があります。大手なら費用が安いと安易に考えていると,規制以上の報酬を強いられる恐れがあるので注意が必要です)。

(参考:報酬率の設定も,対象も明らかではない場合~「経済的利益」?「○%~○%」?

規定名目以外の報酬受領の禁止

~「日当」「○○手数料」「実費」などの名目による脱規制的な設定に注意~

報酬とは,弁護士・司法書士のサービスに対する対価です。サービスに対する対価であれば「報酬」という名前が付いていなくても報酬となります。前記規定・指針は弁護士・司法書士が「解決(定額)報酬」「減額報酬」「過払い金回収報酬」以外の報酬を受領することを禁止しています。そのため,「報酬」という名前が付いていない他の名目の実質的な報酬がある場合に注意が必要です。

「報酬」という名前が付いていない報酬の例として「日当」「○○手数料」が挙げられます。

実際の相談例で,過払金回収報酬以外に,過払金回収報酬よりも高い訴訟へ出頭したときの日当が請求されていた事案があります。その事務所のホームページには「過払金回収報酬○○%のみ」と記載してありますが,要するに「過払金回収報酬という名目の報酬は○○%のみ」というからくりです。しかも,この相談事例の事務所は司法書士事務所でしたが司法書士が扱えない控訴審については本人訴訟支援として別途着手金を請求するというもので,この点の説明もホームページに記載はありませんでした。

「実費」名目でも,それが実質的にはサービスに対する対価であれば報酬です。これは実費名目での報酬の膨らましという古くからある問題です。実費は,実際に事務所が支出した金額なので事務所にプラスは生じません。プラスが生じれば報酬の性質を持ちます。例えば,その事務所が支出した訴訟に必要な実費(印紙・郵券・交通費等)が20,000円なのに,これを超える金額を実費として請求した場合,実際の実費額を超える部分は報酬の性質を持ちます。例えば,訴訟の場合,「訴訟費用:回収額の○%」などという設定の回収額が大きいと実際の訴訟費用以上になるため,報酬の膨らましのための設定である可能性があります。

司法書士が140万円超の事件を扱った場合の報酬

司法書士の権限外である140万円超の事件について書類作成代行を行っている形にして事実上扱う司法書士が多くいます。この場合に過払金を回収しても,代理業務と同じ報酬基準で報酬を請求・受領することは出来ません。これを行うと弁護士法・司法書士法違反(非弁活動)となるからです。140万円を超える事件についてはあくまで書類作成・提出代行であるので書類作成代行相当の報酬(成功報酬ではなく書類作成枚数に応じた額)に止まる必要があります。

また,そもそも,140万円超の事案について,裁判をせず交渉で解決した場合,裁判書類を作成していないので,報酬が発生する理由がありません。

司法書士が140万円を超える事件について代理業務ができないのに扱い,代理業務と同じ基準で報酬を受領する例は多く,そのような司法書士が懲戒処分される例が出ています。

(参考:司法書士の権限外業務と報酬額