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過払い金元金と過払い金利息

~現在,裁判では,過払金利息は,争点とみなされないほど容易に認められます~

~安易に過払い金利息を請求しないと多額の債権を放棄する恐れがあります~

過払い金利息とは

過払い金利息とは,貸付元金に対する利息と同じように発生した過払い金元本に対する利息です。過払い金(元本)が発生すると発生時から返還日まで過払金元本に対して年5%の利息が発生します。この過払い金利息を付加するかしない計算方式(無利息方式)を採用するか,利息を付加する計算方式(利息充当方式)を採用するかにより,請求できる金額が大きく変わります。特に完済後,長期間経過していると過払金の利息額は無視できないほど高額となります。

 

【実例紹介:いずれも完済日から約10年後(時効成立1か月前)に着手して回収した例】

  過払い金元本額 過払い金利息額 合計額 回収額
1 2,467,774円 1,304,278円 3,706,817円 3,700,000円
2 2,402,539円 1,390,735円 3,858,509円 3,850,000円

※最も有利な計算方法(利息充当方式)に基づきます。

※無利息方式(貸金業者が採用)・利息非充当方式(一部専門家が採用)の過払金元本額は1の例が2,288,198円,2の例が2,018,185円と元本額自体が少なくなります。

 

【実例紹介:無利息方式と利息充当方式との金額の比較(回収額1,614,645円)】
  ※いずれの計算方法でも過払金元本の額は同じ事案

  利息充当方式 無利息方式
過払い金元本 894,368円 894,368円
過払い金利息 720,277円 0円
合計 1,614,645円 894,638円

 

上記実例から,元本の90%や100%の回収がその言葉の印象と異なり実に低額の解決となるかが分かります。しかし,驚くことに,最近は無利息方式の元本の50~80%を和解基準とする専門家が少なからず見られます。その事務書の広告に回収率「90%」「100%」などと記されていても,過払い金利息を請求しない方針の場合,十分に回収してもらったつもりでいて,実は大損している恐れがあります。

また,取引期間が長いと取引中から既に過払い状態であることが多く,その場合,無利息方式・利息非充当方式で計算した額は,裁判実務で認められている利息充当方式で計算した場合よりも,過払金の元本額自体が少なくなることが多いので注意が必要です。下表の実例では,無利息方式の元本額を100%回収しても,実際に回収可能な金額の約55%でしかありません。

必読→:最も有利な計算方法:利息充当方式

 

【実例紹介:無利息方式と利息充当方式との金額の比較(回収額1,480,000円)】
  ※取引中に過払金が発生していた事案

  利息充当方式 無利息方式
過払い金元本 1,065,300円 811,043円
過払い金利息 415,570円 0円
合計 1,480,870円 811,043円

 

一般の方は,「過払金利息は請求しない方針ですが,元本は80%~100%回収できます」という説明をされても,その意味を正しく理解できていないでしょうし,利息充当方式での額と比較しなければ正しく意思決定できないでしょう。

報酬を得て依頼者の財産を預かる専門家は過払金元本は勿論,過払い金利息全額の回収を目指すべきです。(参考:当事務所の解決基準

発生の根拠

過払い金(不当利得)に利息が発生する法的根拠は適法に受領できない金額(不当利得)であることを知っていたという「悪意の受益者」の利息支払義務(民法704 条)です。

貸金業者は過払い金の発生を知っていたこと(悪意)を争ってきます。

利息の利率

かつては商事法定利率年6%か民事法定利率年5%かで争いがあり,年6%での回収も可能でしたが,最高裁H19.2.13判決により過払い金利息の利率は民事法定利率の年5%であると確定されました。

民法改正(R2.4.1施行)に伴う利率の変更

令和2年4月1日に改正民法(平成29年6月22日法律第44号)が施行されました。

改正民法では,法定利率は年3%とされ,3年ごとに見直しがされます。

ただし,すべての債権の利息が年3%へ変更されるものではなく,施行日(R2.4.1)以前に利息が生じた場合のその債権の利息は従前の例(年5%)によるという経過措置が定められています。

そのため,R2.4.1より前に発生していた過払金返還請求の利息は年5%のままです(H2.4.1より前に完済していた取引など)。

これに対して,R2.4.1以後に過払い状態になった場合,その過払金返還請求の利息は改正後の利率(施行日時点では年3%)になります。

問題はR2.4.1をまたいで過払金が発生している取引の場合です。R2.4.1をまたいで返済を続けた取引で,実際にはR2.3.31の時点で債務はなく過払い状態でしたが,それを知らずにR2.4.1以降更に支払い過払金の額を増やした場合です。過払金(不当利得)は発生するごとに独立の債権になるとすれば,R2.3.31以前に発生した過払金の利息は年5%,R2.4.1以後に発生した過払金の利息は年3%という考えになるでしょう。しかし,過払金充当合意に基づく1つの債権と捉えれば,過払金利息が発生した最初の時期がR2.3.31以前であれば,すべて法定利率は年5%と解釈する余地もあります。

民法改正の充当方法への影響

1つの取引の過払金の利率が,R2.4.1の前後で年5%,年3%と異なる場合,過払金充当合意による新たな貸付けへの充当はどのようになるでしょうか。

新たな貸付はまず過払金利息へ充当されますが,過払金利息額より新たな貸付額が多い場合,過払金利息を超える額は,法定充当により過払金返還の債務者(貸金業者)に利益が多い年5%の過払金元本へ充当されると考えられます(民法488条4項2号)

発生時期

過払い金利息は過払い金(元本)が発生した時から発生します。過払い金は取引中に発生していることが多く,過払い金利息の発生時期が過払い金発生時とするか取引終了時とするかにより請求できる合計額が大きく異なるため,争われてきましたが,最高裁H21.9.4は,過払い金発生時から利息を支払わなければならいとして,過払い金利息の発生時を過払い金(元本)発生時としました。

立証責任

不当利得についての利息返還義務の根拠である「悪意の受益者」であるという事実は,原則として,不当利得の返還を請求する側に立証責任があります。貸金業者が悪意ではないと反論する根拠は,超過利息を適法に受領できることを定めた貸金業の規制等に関する法律(旧貸金業法)43条1項の「みなし弁済」の適用があるというものですから,原則からすれば,貸金業者にその認識がなかったことを根拠づける事実をすべて請求者側で立証することが必要になるようにも思えます。

しかし,最高裁H19.7.13判決は,「貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払い金を取得した者,すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。」とし,みなし弁済の適用がない場合には,悪意の受益者であることが推定され,その推定を覆す「特段の事情」の立証責任を貸金業者が負うとしました。これにより,実際の立証活動において,「悪意の受益者ではないこと」の立証責任を貸金業者側を負わせたに等しい結果となりました。

同判決により,みなし弁済の適用が認められない取引については,実際上,貸金業者側がは「悪意の受益者」の推定を覆す「特段の事情」を立証しない限り,悪意の受益者であると認定されることになりました。

みなし弁済の適用の主張立証責任は貸金業者にありますが,最高裁H18.1.13は期限の利益喪失特約のある状況下での支払いには,原則として,みなし弁済の適用要件である支払いの「任意性」がないと判断したため,貸金業者がみなし弁済の適用を立証することはほぼ不可能であるので,一時悪意の受益者であると認定は容易にされる状況になりました。

なお,貸金業者は,「悪意の受益者」であるとの推定を覆す「特段の事情」について立証責任を負い,悪意の受益者ではないこと,善意の受益者であることまで立証する責任を負うものではありません。

特段の事情

最高裁平成19年2月13日判決

最高裁H19.2.13判決により貸金業者が負う「特段の事情」とは「みなし弁済の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情」を指します。

同判決以降,「期限の利益喪失特約がある」→「みなし弁済の適用なし」→「悪意の受益者と推定」という構図で容易に悪意の受益者の認定がされていきましたが,期限の利益喪失特約の有無の要件は他の見なし弁済の要件と異なり明文がなく解釈上導かれたものであるので,上記構図には貸金業者から強い反発がありました。

最高裁平成22年7月10日,7月14日判決

しかし,最高裁H22.7.14判決(およびH22.7.10判決)は,以下のように述べて,貸金業者に「特段の事情」の立証により悪意の受益者の推定を覆す道を開きました。

「平成18年判決(H18.1.13判決)が言い渡されるまでは,貸金業者において,期限の利益喪失特約下の支払であることから直ちに同項(みなし弁済)の適用が否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというべきであ(る)」
「制限超過部分の支払について,それ以外の同項(みなし弁済)の適用要件の充足の有無,充足しない適用要件がある場合は,その適用要件との関係で上告人(貸金業者)が悪意の受益者であると推定されるか否か等について検討しなければ,上告人(貸金業者)が悪意の受益者であるか否かの判断ができないものというべきである。」

この最高裁判決は,期限の利益の喪失特約下での支払いという点でのみ,みなし弁済の適用が否定される場合には,「特段の事情」があるとしたものですが,他の要件についてはも充足していない要件の種類や程度等によっては「特段の事情」が認められる余地を認めたため,この判決以降,貸金業者は,大量のATM利用明細書のサンプルや契約書等を提出して,積極的に特段の事情を主張するようになりました。

貸金業者の経営環境の悪化に伴い,貸金業者が特段の事情の主張立証に力を入れるようになった結果,訴訟の長期化するようになり,一部で「特段の事情」を認める下級審判決が出るようになりました。

しかし,「特段の事情」を認める裁判例は未だ少数であり,争われた場合の労力を回避して,利息免除や大幅な減額に応じることは安易な解決です。

最高裁平成23年12月1日判決

最高裁平成23年12月1日判決(CFJ 1件,プロミス1件)は,「リボルビング方式の貸付けについて,貸金業者が17条書面として交付する書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載をしない場合は,17条書面には上記記載を要するとした最高裁判所の判決(H17.12.15判決)以前であっても,当該貸金業者につき民法704条の「悪意の受益者」との推定を覆す特段の事情があるとはいえない。」とし,CFJとプロミスについて,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載がないとして特段の事情を否定しました。

本判決は,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載が必要であるとした最高裁平成17年12月15日判決が言い渡されるまでは,その記載がなくても悪意ではないというCFJ,プロミスの主張をした点では,今後の過払金請求に有利となりますが,本判決は,CFJについては平成16年10月以降,プロミスについては平成14年10月以降は確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載があるという原審の判断を前提としている点など,貸金業者側が今後主張の根拠としうる部分があり,すべてが請求者側に有利な判断というものではないと思われます。

最高裁平成23年12月15日判決

最高裁平成23年12月15日判決は,アコムについて,最高裁平成23年12月1日判決と同様の判断を出しました。評価も同様ですが,請求者側にとって12月1日判決よりも有利に使える判断を含んでいます。